2022-09-01 01:01:00

Vol.19『ひまわり』

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「ぼくらは決して大人を恐れやしないが、大人になった自分に対しては恐れを抱く」

 

あの夏の終わり

手に取った小説にあった言葉…

僕は二十歳になろうとしていた

 

あれから

幾重にも夏は秋に染まり

 

僕は今

何を恐れているのだろう?

 

答えのないまま

 

花瓶の中で

ひまわりが黄昏れていた

 

 

 

2022-08-24 22:44:00

Vol.18『花火とラムネ』

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何処かで花火が鳴った

 

「ずっと、こんな風に続いていく…」

友人が言った

ウチの店で飲んでいた

 

「ガキの頃、焼鳥を頂いて、ここでラムネを飲みながら…そう思ったんだ」

 

もう一度花火が鳴って

消えた

 

酔い醒ましにと

母に頼んだ

 

「ラムネを二本」

 

世界は…

一瞬と永遠で出来ている

 

 

 

2022-08-10 21:54:00

Vol.17『急がずに、でも休まずに』

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改札まで送った

 

彼女は最後まで

“何か”を話さなかった

 

それで良かった

 

「急いじゃだめだよ」

 

彼女は頷き

「でも…休まないわ」と笑った

 

仲良くなったあの夏

彼女がよく口にしていた…

 

Without haste, but without rest.

急がずに、でも休まずに

 

改札の先で

新しい夏が始まっていた

 

 

 

2022-07-27 22:45:00

Vol.16『シベールの日曜日』

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クリスマス…

 

ある事情から

別の名で生きる少女が

彼に贈ったプレゼントは

本当の名前だった…

 

そんな映画を観たことがある

 

名前とは大切なものだった

 

SNS時代

互いにそれを知らないまま

繫がっている

 

代わりに

何を贈れるだろうか?

 

探そう

 

名前を知らない誰かに

想いを馳せて…

 

 

 

2022-07-21 19:07:00

Vol.15『The Catcher in the Train』

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熟れるような電車内で

男の子が僕を見ていた

 

彼は

ヨット柄のTシャツに

シアサッカー地の半ズボン姿で

座席の下には

空色のサンダルが並んでいた

 

すぐに飽き

彼が窓に向き返った瞬間

首筋を走る汗が光に反射した

 

夏だった

夏が僕を捉えた

 

ジャケットを脱いだ

 

電車は目的地へと急いだ