2022-08-10 21:54:00

Vol.17『急がずに、でも休まずに』

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改札まで送った

 

彼女は最後まで

“何か”を話さなかった

 

それで良かった

 

「急いじゃだめだよ」

 

彼女は頷き

「でも…休まないわ」と笑った

 

仲良くなったあの夏

彼女がよく口にしていた…

 

Without haste, but without rest.

急がずに、でも休まずに

 

改札の先で

新しい夏が始まっていた

 

 

 

2022-07-27 22:45:00

Vol.16『シベールの日曜日』

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クリスマス…

 

ある事情から

別の名で生きる少女が

彼に贈ったプレゼントは

本当の名前だった…

 

そんな映画を観たことがある

 

名前とは大切なものだった

 

SNS時代

互いにそれを知らないまま

繫がっている

 

代わりに

何を贈れるだろうか?

 

探そう

 

名前を知らない誰かに

想いを馳せて…

 

 

 

2022-07-21 19:07:00

Vol.15『The Catcher in the Train』

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熟れるような電車内で

男の子が僕を見ていた

 

彼は

ヨット柄のTシャツに

シアサッカー地の半ズボン姿で

座席の下には

空色のサンダルが並んでいた

 

すぐに飽き

彼が窓に向き返った瞬間

首筋を走る汗が光に反射した

 

夏だった

夏が僕を捉えた

 

ジャケットを脱いだ

 

電車は目的地へと急いだ

 

 

 

2022-07-13 22:48:00

Vol.14『ノーサイド…』

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ラガーマンだった

 

とは言っても

小学生の頃

スクールに通っていただけだ…

 

7月9日の夜

録画したラグビーの試合を見た

 

ただ

前日の記憶が

ずっと目の前を覆っていた

 

いずれその記憶にも

ノーサイドの笛が吹かれる…

 

震える右手で

ウィスキーを飲んだ

 

バッファロー?

それがどうした

 

 

 

2022-07-06 23:12:00

Vol.13『蛍』

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カーラジオがサザンを歌った…

 

先々週

伯父の法要があった

 

暑い1日で

こっちの水は甘いぞと

お斎でビールを飲んだ…

 

「親父と同じ誕生日だったよな?」

ハンドルを握る伯父の長男が言った

 

僕が頷くと

 

「夏男か」

そう笑い、ネクタイを緩めた

 

涙見せぬように〜

サザンの歌が木霊した