2022-11-27 22:30:00

『まだまだね』

 昨日は、混み合う新宿を避け、近くの髙田馬場で友人と食事をした。

 

 相手が西武新宿線沿線に住んでいるため、この辺りで会うことにしたのだけれど、高田馬場駅で降りるのは、ひどく久しぶりだった。この友人と会うのも夏の初め以来だった。

 

 お互いに、お店もまるで分からないので、僕がグルメサイトで適当に見つけた鳥料理のお店を予約していた。

 

 ただ、街もお店も関係なく、ビールを頼んで、お互いに初めの一杯を飲み干すと、いつも通りの僕達の時間が始まった。

 

 鳥肉のリエットをフランスパンに乗せてほうばると、友人は「久しぶりに、笑い過ぎてお腹痛い」と柔らかな笑顔を見せた。そしてゆっくりと、ワインを飲んだ。

 

 二時間はあっという間だった。

 

 予約したそのお店は、個室での予約は二時間制だった。初めから、一軒だけの約束だったため、名残り惜しいまま、会計を済ませて店を出た。

 

 駅まで歩いている間、友人は一言も話さなかった。

 

 改札口に着いて、やっと口を開いた。

 

「明日のサッカー、どっちが勝つと思う?」

「もちろん、日本が勝つさ」と僕は言った。

 

 優しく、でもいたずらに…

「まだまだね」と彼女は笑った。

 

 そして、手を降りながら改札を後にした。

 

 実は店の中でも、僕は彼女に一度、「まだまだね」と言われていた。その時の彼女の質問と僕の答えは、ちょっと…内緒にしたいのだけれど…

 

 いずれにしても、今日のサッカーW杯『日本vsエクアドル』の試合終了のホイッスルを聞いて、昨日の改札で、少しづつ小さくなっていく友人の後ろ姿を思い出しながら、僕は…

 

「まだまだだな…」

自分自身に、そう呟いた。