地下鉄の階段を登っていると
突然、ムスクの香りが漂い
すぐに消えた
振り返っても
優しい曲線を描くなで肩と
壊れそうな小さな背中は
どこにもなかった
あの日
その香りのない道を選んだ
僕が
ラストノートを香ることはない
構わず階段を登り切った
街は仄かに
秋の匂いを纏っていた